「会社を良くしたい!」その一心で導入した新しいシステム。
なのに、なぜか現場は冷ややか…。
そんな、胸がざわつくような経験はありませんか?
ある二代目経営者の話です。
彼は念願の経費精算システムを導入し、
経営会議では「これで我が社も一歩前進だ!」と拍手喝采を浴びました。
しかしその時、工場の片隅では、
長年会社を支えてきたベテランのエース職人が、
スマホの新しいアイコンを無表情で眺めていました。
そして、静かにこう呟いたのです。
「…で、これが俺たちの仕事と、一体何の関係があるっていうんだ?」
これは、多くの会社で静かに広がっている、
あまりにも悲しい「温度差」の正体です。
なぜ、こんな悲しいすれ違いが起きるのか?
実はこれ、経営学の権威ハーズバーグが提唱した「二要因理論」で、
驚くほど明確に説明できてしまうんです。
ワクワクしますよね。ちょっとだけ専門的な話をさせてください。
彼の理論をものすごく簡単に言うと、人間の仕事に対する感情は、
- 衛生要因: これがないと「不満」になるが、あっても「満足」にはならないもの。(給料や労働環境など)
- 動機付け要因: これがあると「満足」し、やる気が燃え上がるもの。(達成感、承認、成長、仕事そのものの面白さなど)
この2つは、全くの別物なんです。
そして、経費精算や日報の効率化というのは、
典型的な「衛生要因」の改善です。
「面倒くさい」という不満は少し減るかもしれません。
でも、それだけ。 現場のエースたちの、
仕事へのプライドや「やってやるぞ!」という内なる炎、
つまり「動機付け要因」を1ミリも刺激しないのです。
だから、彼らの本音は「だから、何だ?」になる。
これは、彼らが変化を嫌っているわけでは決してないんです。
DXの心理学:なぜ「便利」なのに「嬉しくない」のか
人間って面白いもので、
「不満」が解消されても、
それは「当たり前」になるだけで、
感謝やモチベーションにはなかなか繋がりません。
一方で、
「自分の仕事が認められた」
「自分の技術が役に立った」
「新しい挑戦で成長できた」という
「動機付け要因」が満たされた時、
人は内側からエネルギーが湧き出てきます。
ベテラン社員のプライドは、まさにこの「動機付け要因」の塊。
そこを無視した「的外れなDX」は、
彼らにとって「自分たちの仕事は、
会社にとって重要ではない」
という無言のメッセージとして伝わってしまう危険性があるのです。
これが、あの「しらけムード」や「沈黙の抵抗」が生まれる心理的なメカニズムです。
明日からできる「たった一人の心を動かす」DXの始め方
では、どうすればいいのか?
壮大な計画は必要ありません。
たった一つのことから始められます。
- ヒーローを探す: まず、社内で一番「頑固で、腕のいい」ベテラン職人さんを一人見つけてください。
- 敬意をもって聞く: 「効率化」の話は一旦忘れて、「長年のご経験の中で、一番『面倒だけど、ここが腕の見せ所なんだ』と感じる作業は何ですか?」と、教えを請う姿勢でヒアリングします。
- 専用機を贈る: その作業の「ほんの一部」でいい。ノーコードのようなツールでサッとアプリを作り、「〇〇さんのための専用機です。ちょっと試してもらえませんか?」とプレゼントするのです。
これは、私がかつて製造業の現場で、まさにプログラミングで苦労しながらやっていたことです。そして今、ノーコードという武器で、クライアント様とその感動を分かち合っている、実証済みの方法でもあります。
【今日の学び】
- DXの目的は「効率化」の前に「組織の活性化」である。
- 真のDXは、社員の「不満」を取り除く衛生要因の改善だけでなく、「満足」と「やりがい」を創造する動機付け要因から始まる。
- 会社の本当の宝は、外部の最新ツールではない。社内にいるベテラン社員の「知恵」と「プライド」だ。
「この記事でお話しした内容は私の経験から導き出した『最初の成功は、ベテランに捧げよ』という哲学をベースになっています。私の実体験を交えて、より詳しく解説した動画をご用意しました」 コチラより
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